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トータル・クオリティ・マネジメントの魅力 – The Fascination of Total Quality Management

全体的品質管理とは何ですか?

はじめに

全体的品質管理(TQM)は、品質管理に焦点を当てる経営戦略の一つであり、すべての職能部署が品質を維持し向上させることに取り組むものです。TQMは、製造業に限定されたものではなく、サービス業や公共機関においても展開されています。本稿では、TQMの歴史や基本的なコンセプト、TQM実践のための手法やメリット、課題、成功事例などについて解説していきます。

TQMの歴史

TQMの始まりは、日本における品質管理の実践によるものだと言われています。1950年代にエドワード・デミングが日本に渡り、品質管理の指導を行ったことが端緒となり、その後、日本企業での品質管理が劇的に改善されました。その後、日本企業が世界的な競争力を獲得し、その品質改善手法が注目されるようになりました。

TQMは、1987年にアメリカの国防総省が宣言した「Defense Management Review Decision(DMRD)」において、特定の品質管理手法ではなく「品質の持続的な改善」を重視する考え方として正式に採用され、一般的に知られるようになりました。

TQMの基本的なコンセプト

TQMの基本的なコンセプトは、かつては「顧客志向」という言葉を中心に語られていました。しかし、近年になって、顧客満足を達成するためには「従業員満足」という視点も重要だと認識されるようになっています。

TQMにおいて重要なのは、品質の基準を定め、その基準を達成し維持することです。そのためには、以下のような原則が挙げられます。

  • 顧客満足を最優先に考える。

  • 品質を持続的に改善する。

  • チームワークを重視する。

  • 動機付けやトレーニングなど、従業員の能力向上に注力する。

  • 在庫削減など、無駄の排除を行う。

これらの原則を守りながら、全社員が品質管理に貢献することがTQMの基本となります。

TQM実践のための手法とメリット

TQMを実践するためには、以下のような手法があります。

1. PDCAサイクル

PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルは、問題の分析・改善策の作成・実施・評価・再分析を繰り返すことによって継続的に品質を改善する手法です。具体的には、以下の手順を踏みます。

  1. Plan(計画):問題の発生原因の分析、改善策を作成する。

  2. Do(実施):改善策を実行する。

  3. Check(評価):改善策の有効性を評価する。

  4. Act(改善):改善策を標準化し、定常化する。

PDCAサイクルは、品質管理以外にも様々な分野で使われることがあります。

2. 7つの基本的な手法

TQMを実践するための基本的な手法として、以下の7つが挙げられます。

  1. フローチャート法:業務プロセスを図式化し、問題を発見する。

  2. ヒストグラム法:データをグラフ化し、分布を見る。

  3. チェックシート法:データの収集方法を定め、正確性を向上する。

  4. 散布図法:二つの変数の関係をグラフ化する。

  5. パレート図法:多くの問題のうち、重要な問題をピックアップし、対策を考える。

  6. 帰無仮説検定:データの信頼性を評価する。

  7. 多変量解析:複数の変数の関係を分析する。

3. ISO規格

TQMを実践するための国際的な規格がISO9000シリーズです。ISO9001は、品質管理システムの認証基準として一般的に使われるものであり、品質マネジメントシステムの要素や要件、手順などが詳しく規定されています。ISO規格を導入することにより、品質マネジメントシステムを構築する手間を省き、品質改善の取り組みを効果的に進めることができます。

TQMを実践することにより、以下のようなメリットが得られます。

  1. 品質改善による製品やサービスの価値向上。

  2. 生産性の向上。

  3. コスト削減、無駄の排除による経済的効果。

  4. 顧客満足度の向上によるリピート購入や口コミによる宣伝効果。

  5. チームワーク強化による人間関係の良好化、従業員のモチベーション向上。

  6. 法令遵守や社会的責任の遵守につながる。

TQMの課題

TQMの実践に際しては、以下のような課題があります。

1. 経営層のリーダーシップ

TQMを実践するためには、経営層がリーダーシップを発揮し、継続的な品質改善に向けて取り組むことが必要です。経営層の意向や方針が徹底されなければ、企業全体の理念としての浸透は難しいとされています。

2. 品質意識の認識度の低さ

TQMを実践するには、品質改善に対する従業員の理解と共感が必要です。しかし、一般的には、品質管理は「自分たちとは関係のない話」という認識が広がっているため、その普及に課題があります。

3. PDCAサイクルの徹底

PDCAサイクルは、品質改善を進めるうえで基本的な手法ですが、徹底が不十分な場合、品質改善に限界が生じることがあります。特に、P(計画)の段階での不十分な調査・分析に起因する問題発生のリスクが存在します。

TQMの成功事例

TQMを実践し、成功を収めた事例として、日本の自動車メーカーが挙げられます。TQMに基づく生産管理システムを構築し、品質改善に取り組むことにより、品質の向上や生産性の向上を達成しました。さらに、顧客満足度の向上を追求することによって、世界的な競争力を獲得しました。

また、日本の高等教育機関でも、TQMを導入することにより、教育・研究品質の向上を図る試みが行われています。大学全体で品質を向上させようとする取り組みが進められており、学生や教員にフィードバックを行いながら、継続的な改善を進めることに成功しています。

まとめ

TQMは、品質管理を経営の哲学として実践することにより、企業の競争力を維持・向上させるための重要な手法です。顧客志向の視点に加えて、従業員満足や無駄の削減など、多角的な観点が重視されています。TQMを実践することで、品質の向上や生産性の向上、コスト削減など、企業にとっての多数のメリットが得られることが期待されます。しかし、その一方で、リーダーシップや従業員の認識度、PDCAサイクルの適切な実践など、課題にも直面することがあります。成功事例を見ながら、TQMの実践に取り組むことが重要だといえます。